紅茶の価値は?
権兵衛党
/
はい、待たせたわね。
そう言って美佐枝さんがテーブルに置いたのは、どうみても紅茶であった。
さてどうするか。
俺は心の中でちょいとばかり首を捻った。
ここは美佐枝さんがやってる、つまり幼馴染の母親が経営している喫茶店である。そし
てそうであるからには当然とでも言うように、ヤツもウエイトレスの格好で注文を取った
り飲み物を運んだりしているのであった。現にさっきオーダーを取りに来たのはヤツであ
る。そして出てきたのがこの紅茶。
しかし、俺がアイツに頼んだのは珈琲である。
見慣れてる筈の服装が何故か今日に限ってやけにが眩しく思え、しいて『ハハハいつも
通りの俺ですよ?』的な演技をしつつ頼んだのでよく覚えている。間違いない。この鮮や
かに紅い液体が実はハードボイルドな漢の魂をくすぐる珈琲だ、なんて事はありえなかろ
うし。
という事はこれは明らかなミスである。美佐枝さんが間違う筈もなし、きっと注文とっ
て行ったアイツの仕業だろう。わりと抜けてるからな、あいつは。
さてどうするか。
思考はそこに返ってくる。
いや確かに湯気を立てるそれは美味そうではあるのだが、それとこれとは別問題だ。
気分的には紅茶でも珈琲でもどちらを飲んでも構わない気分ではあるが、お値段の方は
紅茶の方が120円も高かったりする。
俺、あんまり金持ってないのだ、じつは。
もちろんその程度の料金差が気になるなら最初から自販機で喉を潤せよ、という向きも
あるだろうがそこはそれ、通りがかりに美佐枝さんにニッコリと笑いかけられてそれを
無視できる人間はこの商店街には一人も居ないと俺は断言できるね。
スマイルは0円だが、無料というわけではない。まことに世の真理といえよう。
とりあえず真理はさておくとして、しかし注文と違うモノが出てきたのは事実である。
やむなし。
「すみません、俺が頼んだの珈琲なんですが……」
お盆を胸に立ち去ろうとしている美佐枝さんにそう言った。
クルリと振り返った美佐枝さんは、俺のテーブルに置かれた紅茶に――美佐枝さんその
人が持ってきたにも関わらず――初めて気がついたように、まあ、と小首を傾げた。
「ごめんなさい。すぐに取り替えるわね」
そう言って、机のティーカップに手を伸ばす。
けれどそこで、つまり俺の至近でかがみ込んだ所でその動きが止まった。
そして、何でもない事のように静かに囁く。
「このあいだね、あの子に美味しい紅茶の淹れ方を伝授したのよ」
「は?」
唐突に何の話だろう。
あの子ってのは間違いなくあいつの事だよな?
「それからずっと練習してたのよ。あの子、不器用だから」
アレが不器用である事を認めるのにはやぶさかではないけど。
なにしろ、小学生の頃には家庭科の授業で伝説の『卵割り連続20個失敗』という記録を
打ち立てていたりする。後で大小の殻がグチャグチャに混じりまくった上に焼け焦げだら
けのスクランブルエッグを延々と喰い続けるハメになったのは俺だから、記憶は確かだ。
……て、待てよ? この話の流れだと、この紅茶を淹れたのはひょっとして美佐枝さん
ではなくて――
「美紀なのよね、それ淹れたの。言うまでも無いけど、お客様に出すのはコレが初めて」
「……ぐあっ」
先に言っといてくださいよ美佐枝さん!
これじゃあ取り替えてくれって言った俺が悪人みたいじゃないですか。
何で自分で持ってこないのかと思ったら……あああ、厨房の角から顔半分だけ出して
不安そうにこっち見てるし!
「あの子、初めては貴方に飲んで欲しいって。貴方が美味しいって言ってくれるかなぁ、
ってそればっかり……でも、もういいの」
未だ湯気の立つ中身の入ったままのティーカップを、悲しそうにお盆に戻す美佐枝さん。
うああああっ、厨房からこっちを伺ってる顔が泣き出しそうになってるよ!?
一刻の猶予もネェ! もはや120円なんかに構ってられん!
「ちょ、ちょっと待った! それでっ、紅茶でいいです!」
「ダメよ裕樹クン。注文された物を出すのが喫茶店の仁義、これは下げて珈琲を出すわ!」
縋る俺を振り払い、美佐枝さんが悲しげに厨房へと一歩を踏み出そうと――
「判った、判りました! じゃあ、追加で紅茶を頼みます! だからそれを!」
――踏み出そうとした美佐枝さんがピタリと止まり、別人かと思うほどの満面の笑みで
コトリとティーカップを机に置いた。
そして。
「やったわ美紀!」
「お母さん!」
駆けよった娘と高々と交わされるハイタッチ。
息を潜めて見ていた暇な客達による満場の拍手が巻き起こる中、俺はガックリと机に
突っ伏したのだった。
……いつもの事ながら、何なんだろうこの無意味にノリノリな喫茶店と親子と客どもは。
/
収支:ミスオーダーの紅茶を珈琲に替えてもらう。
ただし、別に紅茶を注文
「ええと珈琲が一杯と紅茶が一杯でー」
ニコニコと微笑みながら伝票を読み上げる美紀になけなしの財布の中身を渡し、俺は
ぐったりしつつ店を後にしたのだった。結局、高くついてしまったなぁ。
商店街を右に進めば俺の家、左に進めば学校の方。脚に任せてふらふらと歩き始める。
腹の中は意地で両方飲んだ紅茶と珈琲でもうガボガボである。
「……まあ、美味しかったけどさ」
結局言いそびれた感想を誰に言うとも無く虚空に吐き出し、俺は前に――
「やったわね美紀!」
「ありがとうお母さん!」
進む前に盛大にコケるハメになった。
貴様ら何で付いてきてるんだ! 店はどうした!
商店街のど真ん中で盛大にハイタッチを交わす親子と、たぶん意味も判らず巻き起こっ
てる商店街の皆さんの拍手の中、俺は今度は地面にガックリ突っ伏したのであった。
……ああもう、何なんだこの愉快な幼馴染と母親と商店街。
<了>
★解説
この短文はこちらのフォーマットに合わせて作られました。仲間内でそれぞれひっそ
り作って批評しあった代物です。
よって以下、意図の解説を試みますので興味のない方はスルーお願いします。また、
興味のある方でも最初は何も考えずに上の文をお読みくださる事を推奨します。普通に
読んで読者がどう感じたかが問題であり、読者が全て私の意図通りに読み取ってなどく
れる筈が無いからです。
“はい、待たせたわね。”
会話文から始めるのは、ツカミの初歩です。
幾らでも応用は利きますが、今回は定石通りにいってみました。
“そう言って美佐枝さんがテーブルに置いたのは、どうみても紅茶であった。”
紅茶をさり気なく強調しています。
次の文で主人公が問題にする対象:紅茶を明確にする為です。
“さてどうするか。”
ここから文内容が主人公:思考に移ります。
その切り替えを宣言する為に、あえてこれだけ抜き出してあります。
“俺は心の中でちょいとばかり首を捻った。”
前文を強調する為に切り離した文になります。
最初は前文と合わせて一文にしていました。
“ここは美佐枝さんがやってる、つまり幼馴染の母親が経営している喫茶店である。そし
てそうであるからには当然とでも言うように、ヤツもウエイトレスの格好で注文を取った
り飲み物を運んだりしているのであった。現にさっきオーダーを取りに来たのはヤツであ
る。そして出てきたのがこの紅茶。”
簡単な状況の説明になります。
しかし状況説明を単なる説明文にするようでは物書きとしちゃ終わりですので、ついで
に一人称である事を利して読者に主人公の視線の高さに立ってもらう事を試みています。
ヤツという呼び方でそのキャラとの関係に興味持つかも知れないという期待も。
あと、先ほど紅茶を強調したのはここでちょっと長くて余計な情報のある文を与えても
対象:紅茶をブレさせない為でもありました。
“しかし、俺がアイツに頼んだのは珈琲である。”
前文で別の情報を出したので(そして後文でも出すので)、問題が何かをここで一度
定義します。
“見慣れてる筈の服装が何故か今日に限ってやけにが眩しく思え、しいて『ハハハいつも
通りの俺ですよ?』的な演技をしつつ頼んだのでよく覚えている。間違いない。この鮮や
かに紅い液体が実はハードボイルドな漢の魂をくすぐる珈琲だ、なんて事はありえなかろ
うし。”
幼馴染との関係性を思考の寄り道でさり気に表現してみました。
“という事はこれは明らかなミスである。美佐枝さんが間違う筈もなし、きっと注文とっ
て行ったアイツの仕業だろう。わりと抜けてるからな、あいつは。”
言わずもがな。
前文と同じです。
“さてどうするか。”
前と同じ言葉を同じように置く事によって、目前の問題に立ち返ります。
幼馴染との位置関係という一つの説明を終えたからです。
“思考はそこに返ってくる。”
以前と同じように、強調の為に切り離した文です。
“いや確かに湯気を立てるそれは美味そうではあるのだが、それとこれとは別問題だ。
気分的には紅茶でも珈琲でもどちらを飲んでも構わない気分ではあるが、お値段の方は
紅茶の方が120円も高かったりする。”
更に状況説明。今までの「これまでの経緯」ではなくて、今度は主人公側。
“俺、あんまり金持ってないのだ、じつは。”
更に、一応ながら主人公側にこの問題をまあいいやとスルー出来ない事情を設定しま
した。キャラが立ちますので。
“もちろんその程度の料金差が気になるなら最初から自販機で喉を潤せよ、という向きも
あるだろうがそこはそれ、通りがかりに美佐枝さんにニッコリと笑いかけられてそれを
無視できる人間はこの商店街には一人も居ないと俺は断言できるね。”
読者が不自然だと思うかもしれない箇所を予め潰しておきます。
人間関係やら商店街での立ち位置なんかも判りますし、何か言い訳してるみたいで
キャラクターがよく判るのではないかと。
“スマイルは0円だが、無料というわけではない。まことに世の真理といえよう。”
何らかの結論を出させます。そうでないと落ち着きが悪い。
“とりあえず真理はさておくとして、しかし注文と違うモノが出てきたのは事実である。”
思考が結論に達したので元の問題に戻ります。
これで必要な前情報が出揃ったので、ようやくここから話が進み始めます。
“やむなし。”
そして、ようやく冒頭に突きつけられた問題に対する結論です。
実際の話内経過時間ですと、ここで冒頭の直後。
作者としては、今までのがこの話を始めるにあたってコレだけは読者に知っておいて
貰いたかった事、です。私はココを可能な限り説明臭くなく過不足無く与えるのが書き手
の腕の見せ所、と心得ています。主人公の名前とか幼馴染の名前とか、歳は幾つだとか、
何と言う学校に通っているかだとか、自己満足の為の設定はこの話では必要ありません。
第一テンポ悪くなりますでしょ?
“「すみません、俺が頼んだの珈琲なんですが……」”
年上の知り合いの人(それも悪い印象を持たれたくない人)にこの指摘をする為にこれ
だけ考える主人公なら、後ろの三点リーダは必要だと判断しました。
“お盆を胸に立ち去ろうとしている美佐枝さんにそう言った。”
主人公は気づいてませんが母娘側は確信犯ですから、ここはごゆっくりとか声をかけず
に、指摘される前にそそくさと立ち去ろうとすると判断しました。
有無を言わさない離脱に失敗して内心で舌打ちくらいはしたかもしれません(笑
“クルリと振り返った美佐枝さんは、俺のテーブルに置かれた紅茶に――美佐枝さんその
人が持ってきたにも関わらず――初めて気がついたように、まあ、と小首を傾げた。”
全部読んだ後で、言われて見ればわざとらしい、と思って貰えてればいいのですが。
ちょっと無理かな……少なくとも意図はそうでした。もっとも、普通にスルーされてて
も全く問題ない箇所です。
“「ごめんなさい。すぐに取り替えるわね」”
この台詞自体は別段何も。
取り繕ってるだけです。
“そう言って、机のティーカップに手を伸ばす。”
これも特に。
“けれどそこで、つまり俺の至近でかがみ込んだ所でその動きが止まった。”
ん? と思わせる事を目的にした文。
主人公に、そしてその目を通して読者にも。
“そして、何でもない事のように静かに囁く。”
この一文、要るか要らないかちょっと悩みましたがそのままに。
外した方がよかったかもしれません。
“「このあいだね、あの子に美味しい紅茶の淹れ方を伝授したのよ」”
“「は?」”
唐突な話と、ハテナマークの浮ぶリアクション。
“唐突に何の話だろう。”
“あの子ってのは間違いなくあいつの事だよな?”
間違いなく、にするか、もちろん、にするか。
悩んだのはそこだけですね。
“「それからずっと練習してたのよ。あの子、不器用だから」”
これも、特に。
ただジワジワと外堀を埋める様に真相に近づいて行く為の、云わばタメとしてどうして
も外せない一文です。
“アレが不器用である事を認めるのにはやぶさかではないけど。”
呼び方をヤツにするかあいつにするか、ちょっと悩みました。
結局、アレという一番酷い呼び方をされてますがテレです、テレ。
“なにしろ、小学生の頃には家庭科の授業で伝説の『卵割り連続20個失敗』という記録を
打ち立てていたりする。後で大小の殻がグチャグチャに混じりまくった上に焼け焦げだら
けのスクランブルエッグを延々と喰い続けるハメになったのは俺だから、記憶は確かだ。”
関係の強調ですね。
簡単に珈琲に取り替えられないように持っていきたかったので。
“……て、待てよ? この話の流れだと、この紅茶を淹れたのはひょっとして美佐枝さん
ではなくて――”
次の会話文をあんまり長い文にせずにズバッと告げてもらう為に、先に真相に辿り着い
てもらいました。
“「美紀なのよね、それ淹れたの。言うまでも無いけど、お客様に出すのはコレが初めて」”
“「……ぐあっ」”
そして、スバッと決定打。
名前はここにいたって、初めてどうしよっかなーと二秒だけ考えてこれにしました。
誤解される事はまず無いとは思いましたが、一応、美の字を母親と共通にする事で
母と娘、という印象をさり気に持たせようと画策してます。
“先に言っといてくださいよ美佐枝さん!”
“これじゃあ取り替えてくれって言った俺が悪人みたいじゃないですか。”
もちろんそう仕向けてるんです。
これを断わったら悪人だー。
“何で自分で持ってこないのかと思ったら……あああ、厨房の角から顔半分だけ出して
不安そうにこっち見てるし!”
そして、別方向からのプレッシャー(笑
角から半分だけ顔出して……巨人の星は偉大だネ。
“「あの子、初めては貴方に飲んで欲しいって。貴方が美味しいって言ってくれるかなぁ、
ってそればっかり……でも、もういいの」”
この辺りはもう、ノリで書いてますが。
最初「あの子、初めては貴方がいいって〜」になってましたが、ちょっと台詞がエロい
気がしたので現行に。
“未だ湯気の立つ中身の入ったままのティーカップを、悲しそうにお盆に戻す美佐枝さん。”
この人も役者だなー、とか自分で書いてて思いました。
書いてて自分で笑いが止まりませんでした。
一応後で読み返してみたけど、やっぱここ笑う所ではないかと。
“うああああっ、厨房からこっちを伺ってる顔が泣き出しそうになってるよ!?”
世にも恐ろしい連携プレーである。
“一刻の猶予もネェ! もはや120円なんかに構ってられん!”
ここまで来てまだ120円を気にしている主人公だからこそ、話のオチが引き立つ訳です。
珈琲一杯分の予定が紅茶・珈琲各一杯分の出費に、という……
“「ちょ、ちょっと待った! それでっ、紅茶でいいです!」”
“「ダメよ裕樹クン。注文された物を出すのが喫茶店の仁義、これは下げて珈琲を出すわ!」”
ここですんなり注文の変更を認めてしまっては話として面白くありません。もう一声!
紅茶と珈琲を替えるという話の前提が崩れる、こちらの都合もありますが。
“縋る俺を振り払い、美佐枝さんが悲しげに厨房へと一歩を踏み出そうと――”
ここら辺、書いてる側が一番楽しい部分です。
“「判った、判りました! じゃあ、追加で紅茶を頼みます! だからそれを!」”
ここでは前会話文の後この会話文までの間に、今まで散々書いてた主人公の独白文を
入れてないのがポイントです。
思わず言っちゃった感がこれで引き立つ筈です。
“――踏み出そうとした美佐枝さんがピタリと止まり、別人かと思うほどの満面の笑みで
コトリとティーカップを机に置いた。”
持ったままハイタッチしたら零れるかも知れないからネ。
“そして。”
“「やったわ美紀!」
「お母さん!」”
“駆けよった娘と高々と交わされるハイタッチ。”
“息を潜めて見ていた暇な客達による満場の拍手が巻き起こる中、俺はガックリと机に
突っ伏したのだった。”
画として想像すると、すこぶる面白いですな。
この流れ、如何にもマンマどこかのヴィジュアルノベルなギャルゲにありそうなイベント
って気もしますが。
なので、ちょいとだけ後を続けることにしました。
“ ……いつもの事ながら、何なんだろうこの無意味にノリノリな喫茶店と親子と
客どもは。”
締め。
ただし、一段目。
“ 収支:ミスオーダーの紅茶を珈琲に替えてもらう。
ただし、別に紅茶を注文”
結果です。
判りやすくしようと思いまして。
“「ええと珈琲が一杯と紅茶が一杯でー」”
話の核心でありながら、マトモな台詞がコレしかないヒロインの悲哀を感じられますか?
“ニコニコと微笑みながら伝票を読み上げる美紀になけなしの財布の中身を渡し、俺は
ぐったりしつつ店を後にしたのだった。結局、高くついてしまったなぁ。”
トホホ感を醸し出そうと思い、付け加えました。
“商店街を右に進めば俺の家、左に進めば学校の方。脚に任せてふらふらと歩き始める。”
話的には無くてもいい一文ですが、全く店外の事に触れないのもリアリティに欠けると
思いまして追加しました。
“腹の中は意地で両方飲んだ紅茶と珈琲でもうガボガボである。”
当然の結果です。
“「……まあ、美味しかったけどさ」”
“結局言いそびれた感想を誰に言うとも無く虚空に吐き出し、俺は前に――”
もし綺麗に締める派の書き手であれば、これでそのままどこかに歩いていったでしょう
ね彼。
“「やったわね美紀!」
「ありがとうお母さん!」”
“進む前に盛大にコケるハメになった。”
でも私が作者ですので、んな事はありえないんですハイ。
繰り返しはギャグの初歩です。
“貴様ら何で付いてきてるんだ! 店はどうした!”
当然ほったらかしデス。
“商店街のど真ん中で盛大にハイタッチを交わす親子と、たぶん意味も判らず巻き起こっ
てる商店街の皆さんの拍手の中、俺は今度は地面にガックリ突っ伏したのであった。”
繰り返しはギャ(以下略
“……ああもう、何なんだこの愉快な幼馴染と母親と商店街。”
繰り返しは(以下略
二段オチの締めです。二段目の必要性については議論の余地があるかと思われますが、
ただ綺麗にストンと落ちるだけの話にしたくない方は一考してください。
で、総評。
私は起承転結であれば、起承に重点を置く書き手です。話を進めだす前に如何にして
読者に必要な事を、それも「ああ説明文だな」等と思わせないで知らせるか、に技術の
大半を注いでいます。よって話が進みだしてからよりはその前の部位の解説の方が多少は
含蓄があるはずだと推測します。
そして巧者の方であれば理の当然であると思われますが、重要な点が一つ。
私はもっともらしく一文一文に解説を付け加えましたが、大事な事はこれを実際に書い
てる最中『私はここで述べたような事は全く一切これっぱかしも微塵も完璧に考えてな
かった』という事実です。
じゃあ嘘を書いたのか? と思われる向きもあるかと思われますが、そんな事はありま
せん。第一そこまで暇な事はしてられません。
つまり『こういう事は考えなくても出来るようにしてある』というだけです。
逆に言えば投手の投げる球がカーブだ、と見極めてから「ええとカーブの打ち方は……」
と考えるヤツがどこにいるかという事で、カーブと思った瞬間には身体が反射的に動くよ
うにしておかないと使い物にならないという事です。私の長短合わせて七十余の話は大方
その為のカーブ打ちの、フォーク打ちの、スライダー打ちの特訓みたいなモンです。
これはその結晶ですね。
凄く偉そうな事言いますが、人の技術を聞いて「へータメになった」と思っただけでは
実は自分の足しには全くなってません。その先、ですハイ。
以上、文の主旨が怪しげになってきたのでここまで。
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